未来のデイリーライフ

ツーリングの備忘録をメインに、自転車や日常の事も書きます

CL250インプレッション


バイクを始めて間もない頃、あっちのバイクこっちのバイクも、どれもこれも魅力的に映っていた頃、特に気になっていたジャンルが一つありました。

スクランブラー』呼ばれるジャンルです。大きな丸目一灯で丸いタンク、教習車のCB400のようなザ、バイクという外見のバイクで、違うのはブロックタイヤを履いていてマフラーが地面と平行に、それも高いところにあるのが特徴です。

ドゥカティの『スクランブラー400』、僕はこのバイクがとても気になっていました。スクランブラーというジャンルは、今も当時もそれ程勢いがある訳ではなく、『スクランブラー』という言葉自体も、ドゥカティのバイクを見て知ったくらいでした。ですがスクランブラーのルックスを見て、ものすごく惹かれてしまったのです。当時僕が所有していたKTMのRC390は、スポーツカーのようなスマートさと派手さを全面に出したバイクで、スクランブラーとは似ても似つきません。それ故に惚れたともいえます。古き良きバイクのスタイルと、何処でも行けそうなブロックタイヤで渋さとワイルドさを感じられます。

 

それから数年が経ち、スクランブラーへの憧れは有りつつも、ドゥカティハスクバーナといった取扱店が少ないために縁遠かったのですが、2023年、ついにスクランブラーに乗れる機会が訪れたのです。HONDAの『CL250』。自他共に認める国産スクランブラーが発売されました。これはもう早速乗ってみたいという事で、HONDA GO バイクレンタルを利用してきました。

 

 

レンタル当日

今回のレンタルバイクもバイクショップトライさんからにしました。このブログで以前CBR250RRのレンタル&インプレ記事を書いた時と同じです。

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冒頭で、『バイクを始めて間もない頃、あっちのバイクもこっちのバイクも魅力的に映っていた』と書きましたが、今は興味が薄れてきたという話ではありません。スーパースポーツ、カブ、ネイキッド、モタードと色々乗り継いで来て、レンタルバイクでもオフ車やアドベンチャー、排気量も様々乗ってきました。すると自分の好きなジャンルというのが見えてきます。今で言うとモタード。オフロードバイクにオンロードタイヤを履かせたこのジャンルは、どこでも気軽に行けるバイクであるというところが気に入っています。道が荒れていても平気ですし、軽くて取り回しや燃費が良くツーリングでも助かっています。道が荒れていても平気という点はスクランブラーにも同じことが言えそうです。という訳で、今はモタードに熱心な為、他のジャンルのバイクについてはあまり調べなくなっていました。今回CL250をレンタルするにあたって、久々に他のバイクというものを調べました。

カラーは3色あるようです。オレンジ、グレー、ホワイト、一体どれになるのでしょうか。ワクワクしながら待っていると、運ばれてきたのは青っぽい色のタンクのバイクでした。『パールカデットグレー』とHONDAのHPには書かれていましたが、現物を見ると灰色というよりも暗めの空色という感じでした。赤や黒や白の印象が強いHONDAのバイクでしたが、いい意味でらしくないカラーでとてもカッコいいです。まるでヨーロッパの石畳に停めてありそうな上品な雰囲気すらあります。

 

跨ってみると、スーパースポーツやモタードとは全然異なるポジションで違和感が湧きます。CB125Rというネイキッドバイクも所有していますが、それとも微妙に異なりました。スーパースポーツのようにシートが後ろ目にありますが、ステップはシートよりも前にあります。少々ハンドルが遠いような気もしますが、モタードのように気合を入れて握らないといけないような雰囲気でもありません。始めは慣れるかどうか心配でしたが、意外にも出発して数十分で慣れてしまいました。リラックスして乗れるようなポジションになっています。車の運転において、しっかりとシートに背中をつけて、ハンドルを握った手の肘が軽く曲がるくらいが適正と言われていますが、それをバイク上で再現しているかのようです。ハンドルが遠いような気がして、前乗りしてみたり、後ろ乗りしてスポーツバイクのように前傾させてみたりしていましたが、不思議とだんだんハンドルが近づいてきて、モタードのように背筋を伸ばして座っていました。ポジションが決まると、これがなかなか気持ちが良いのです。モタードのようにステップに荷重をかけながら背筋を伸ばすような感じではなく、座った椅子の上で自然と背筋を伸ばすような感覚です。だからどっしりとした、ゆったりした姿勢という表現が近いでしょうか。『バイクで軽く流す』『トコトコ走る』と言うのはまさにこう言う事なのかもしれないと思いました。

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エンジンは水冷250cc単気筒です。小排気量のCB125RやKTMの250、390シリーズのイメージから、中型の単気筒は高回転で高めの音を出して走るイメージですが、CL250は外見イメージ通り、低めのドコドコとした音を聴かせてくれます。CB125Rも(あまり使えるタイミングはないですが)3000回転くらいの低回転時に、ドゥロロロロロという見かけによらず重厚感のあるサウンドが出るのですが、そこをいい感じに切り取らせてくれたのがCL250のエンジンという感じでした。タコメーターが付いていないので正確な回転数は分かりませんが、250cc単気筒でありながら頑張って低回転よりの味付けにしてあるような感じがしました。おかげさまで重厚感のある単気筒サウンドを味わうことができます。ただし気持ちのいい音のする低回転では、登り坂のパワー不足間がありました。ギアを落とすなり、ある程度のスピードで始めから回転数が高ければ気になりませんが、『軽く流す』くらいでまったり走らせていると、坂道では途端に失速します。今日も下呂方面に向けてずんずん山の中に入っていたので、そこが気になりました。そして回転数が上がってくると、重厚感のあるサウンドは何処へやら、聞き慣れた250cc単気筒の野太い高回転音になります。CB250Rがこんな感じなんでしょうか。

 

道の駅飛騨金山温もりの里温泉で一度休憩をします。自販機で缶コーヒーを買って戻り、改めてCL250を眺めます。

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シートがクラッシックなバイクのようでかっこいいです。

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このままでも十分ですが、ブラウンカラーにカスタムしてみたいとも妄想してしまいます。公式HPにも書かれていたタンデムシート末端のHONDAロゴも見つけました。座り心地は上々です。普段乗っているバイクのシートは、どれも座り心地よりもフィット感や足つき性の為に絞られているので『座り』心地としてはイマイチなのですが、先程も言ったように車のシートに座るようにリラックスして乗れるシートだと思いました。ただし逆に言うと足を真っ直ぐ下ろせるシートではないので、足つきは悪くなっています。それも考慮してなのかシートの厚み自体も薄くしてシート高を下げているような印象で、今日の終わりがけでは少々お尻が痛くなりました。シンプルなメーター、いかにも『オートバイ』といった印象のタンク、真一文字ではなく少し手前に湾曲したハンドルと、『こういう普通のバイクもいいね』と思わせてくれるハンドル周りです。タンクの色は外で見てもやはりグレーではなく空色をしています。僕はこの色がとても好きになってきました。

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道の駅を出て岩屋ダムへと向かいます。ダム上の広いスペースでブログ用の写真撮影しました。つい先ほども道の駅で舐めるように見回しましたが、簡単には見飽きさせてくれない本当にいいデザインをしていると思いました。

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まず足つき確認の写真を撮りました。CL250のシート高は790mm。僕の身長体重は166cm60kgになります。片足立ちの際、癖でお尻をずらしていたので写真だと片足べったりに写ってしまいました。しかし両足立ちの写真だと爪先立ちになるように、足つきはそれほど良くない為、お尻をずらさなかった場合は、片足立ちの時でも爪先立ちになります。とはいえバイク自体がかなり軽く、不安感は少ないです。CB125R(シート高815mm)よりは少し足つきがいいと言うイメージでした。

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更に詳細を見ていきます。ヘッドライトは大きな丸の中に四つのレンズが並んだ仕様です。上の2つでロービーム、下2つも含める事でハイビームになるようです。HONDAのLED丸目といえば前方を広く照らしてくれないイメージでしたが、CL250はかなり改善が見られました。CB125Rのライトよりもかなり前方広範囲を照らしてくれます。

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シート下には『CLー』と書かれています。『CL250』とフルネームでは書かないようです。主張があまり無いところも落ち着いてカッコよく見えるポイントなのかもしれません。

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右斜め後ろから見上げた時の姿が『スクランブラー』の『ワイルド』な部分を強調してくれています。タンデムシートの高さまで跳ね上げた上で、斜めではなく地面と平行にのびたサイレンサーは、カバーで見た目のボリュームをつけていますし、縦に二つ空いた排気口もいいデザインです。タイヤもセミブロックパターンのおかげで存在感をだしています。f:id:yu11ta03milky:20230602183715j:image

そして個人的に気に入って何度も注目してしまう空色のタンクです。ここはデザインだけでなく使い勝手もかなり良いです。なんと最初から滑り止めが付いています。適度にタンクの輪郭からはみ出ている為、軽くニーグリップすると内腿が接触します。タンデムシートくらいの柔らかさでゴムのように滑らない素材のため、触れているだけで適度な摩擦が発生して自然とバイクと一体化されます。正直今後全てのバイクに滑り止めは標準搭載でいいのではないかと思ってしまいました。それにてもカラーは本当に綺麗です。今日は曇りで透き通ったような空色ですが、晴れた青空の下だとまた違った鮮やかさを見せてくれそうな予感がします。

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さて写真撮影を終えて、ダム湖のワインディングを楽しみながら先へ進みます。スクランブラーも、元になったクラッシックなバイクものんびりと走るイメージなので、ワインディングでは曲がりにくく感じないかな、と思っていました。しかし予想外に気持ちよく曲がってくれます。足つきの項でも少し触れましたが、CL250はどっしりとした外見に反してものすごく軽いバイクです。いざ走らせてみても『ヒラヒラ曲がる』という表現があっています。低回転型の単気筒エンジンで若干の非力感があるとはいえ、コーナーを立ち上がるだけの太いトルク感と、付随する重低音サウンドがあるので、スポーツバイクとは違った気持ち良さでワインディングを楽しむことができます。

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馬瀬川を北上して萩原まで走り、道の駅南飛騨小坂はなももで昼食をとります。この道の駅にはよく休憩で立ち寄るのですが、レストランを利用したことがありませんでした。外の五平餅屋さんが美味しいのでいつもそちらで済ませてしまうのです。よく行く場所というのはよく行くからこそ逆に詳しく無いことって結構ありますよね。いい機会なので利用してみることにしました。

一瞬先払いかな?と思わせるようにレジ横の通路を抜けてテーブル席に着きます。窓際の席からは澄んだ小坂川がよく見えます。ラーメン、そば、けいちゃん定食、岐阜県飛騨地方らしいメニューが並びます。ここにしかなさそうなメニューでいえば『鉱泉粥定食』でしょうか。近くに温泉があるのでその絡みです。飲める温泉もあって以前飲んだことがありますが、あまりにも鉄臭すぎて喉は通りませんでした。流石にここのお粥がそうだとは思いませんが、個人的には少々警戒してしまいます。もう一つ、テーブルのメニュー表には載っていませんでしたが、『ピラフ(小鉢、スープ付き)』という張り紙があったのでそちらを注文しました。チャーハンではなくピラフです。カレーもありますがピラフです。

運ばれてきたピラフはバターが香る魅力的なものでした。具はエビ、にんじん、コーン。硬めのご飯が噛むほどに美味いです。

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道の駅を後に、鈴蘭峠を登っていきます。ここは斜度のきつい登りが続く為、力不足感が顕著でした。ギアを落として更に回せば登っていきそうでしたが、それでは普段のスポーツバイクと変わらなくなってしまうな、というおかしな意地を張ったので余計と感じたのかもしれません。峠の展望台からは天気が良ければ御嶽山が見られるのですが、想像していた通りの曇天で何も見えません。そういえばこのバイクはフロントタイヤが19インチと、一部のアドベンチャーバイクと同じくらいの大きなホイールになっています。大きなホイールによる走破力のおかげか、舗装が剥がれたり波打ったりしている箇所でも不安感が少なかったです。

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鈴蘭峠を降り開田高原方面に向かおうと思っていたのですが、帰る時間を考えるとそれは難しそうです。高原のソフトクリームや、御嶽山の展望を見たかったのですが。展望については鈴蘭峠がそうだったように期待はできなさそうでしたが。という事で引き返すことにします。帰りはせせらぎ街道を下っていくとしましょう。

 

CL250でUターンをしたのですが、軽量かつ低速でも安定感のある走りのおかげかすんなりと出来ました。足がべったりつくわけでは無いですが、咄嗟につけるくらいの足つきはあります。そして足をつけた時に踏ん張り切れる車重の軽さがあります。無理はいけませんが万が一の時に気合いで踏ん張ることもできそうです。ハンドルの切角が少々少なく感じました。ハンドルだけで回ろうとすると思いの外大回りになってしまい、『曲がりきれない!』とバランスを崩して立ちゴケするパターンがあるかもしれません。思えばバイクを降りての取り回しでも、そういえばハンドルが切れないなと感じていました。

 

さてここまで岐阜県の山道マイペースで走らせてきましたが、スクランブラーらしい写真が撮れていません。ダムで撮ったマフラーやブロックタイヤの写真がスクランブラーらしさとも言えますが、『スクランブラーのある景色』とでもいいますか、CL250の似合う場所に行けていないと感じました。似合う場所、舗装されていない地面でしょうか。海外であれば荒野を駆けているイメージですが、日本にそれも今から行ける範囲でそんなものはありません。ですがひとつそれらしい所がありました。行ってみましょう。

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という訳で着きました。

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桜並木であったり、晴れていれば乗鞍岳が望めるお気に入りスポット。CL250は街に溶け込むクラッシックなデザインながら、砂利や茂った草原に置いても主張できるワイルドさがあります。こうしてみると週末のレジャー、いえちょっとした冒険感を感じます。オフロードバイクのように険しい山や森の奥深くまでは行けませんが、ちょっとしたフラットダートや舗装されていない脇道に入って行って新しい発見ができる気がします。そんなライダーの冒険心に応えて寄り添ってくれる、連れて行ってくれるバイクであると思いました。先程紹介したようにフロントタイヤは19インチで一般的なオンロードバイクより大きく走破力があります。それにこうして軽くダートを走ってみると、リアサスも細かい砂利やでこぼこに対して程よく反応し、突き上げや振動を吸収してくれるので座ったままでも乗り心地が良いです。舗装路を走っているよりもフラットダートを走らせている方が気持ちがいいかもしれません。ほんの僅かなオフロード体験でしたがそう感じられました。

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バイクショップに向けて帰路に着きます。5月も末になってようやく緑に深みがでてきたせせらぎ街道で、ふとバイクを停めて、斜め後方から眺めてみます。

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何度見ても本当にかっこいいバイクです。坂道は登らないとか、回していくと重低音が消えてしまうとか不満も溢しましたが、そんなことはさておきCL250の外見に虜になってしまいました。落ち着いたカラーとオートバイらしい外見はどこに置いても自然、これで旅をしたら面白そうだなとつくづく思ってしまいます。普段派手なオレンジ色のバイクに乗っているので余計とそう思えるのかも知れません。

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最後に道の駅パスカル清美に寄って休憩をしましたが、バイクから離れたベンチで休憩しながらも、視線はずっと釘付けでした。遠目に見てもカッコいいです。250ccのバイクらしい小ささを感じません。あんなにカッコいいバイクで今日は一日走っていたのかと嬉しくなってきます。

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返却前にガソリンを入れると8.2L入りました。走行距離が330.7kmだったので計算すると燃費は40.3km/Lだったようです。今日は写真を撮るために同じ所を何度も走ったりしたので、燃費は期待していませんでしたが、驚きの数値でした。自撮りをせずに走り続けていたらもっと良かったということでしょう。タンク容量は12Lだそうなので航続距離も400km近くありそうです。日帰りツーリングなら給油なしで帰ってくることは難しく無いと思います。

 

終わりに

今回スクランブラーというジャンルを、ひいてはクラッシックなバイクを初めて乗ってツーリングをしました。普段乗っているバイクは最新の技術でスポーツ性が高く、高性能でカッコいいという印象が強く、どちらかといえば『マシン』という感じでした。ですがCL250はHONDAがキャッチコピーで使っている『バイクが好きだ』を体現しているかのようで、今より少し前の時代、『単車』『オートバイ』と呼ばれて身近だったもの、という印象を受けました。僕は以前クロスカブ110を所有していましたが、『のんびり走るカブは歳をとってからでも乗れる』と決めつけて高性能なCB125Rに乗り換えました。またKAWASAKIのW800のような落ち着いた大人のバイクも、かっこいいなと思いつつもう少し歳を重ねてから乗ればいいやと思っていました。しかし今回レンタルして思ったのは、たとえCL250が特別高性能なマシンでなくても十分ツーリングを楽しめるし、道の駅の駐車場に停めたバイクを見て惚れ惚れできるということです。全く、良いバイクをHONDAは出してきてしまったなぁと、心が揺らいでしまった今回のレンタルでした。

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