またしてもバイクツーリングネタではなく別の日記を書きます。
北海道ツーリングの記事、そろそろ書かないとなぁ
タイトルの通り、乗鞍スカイラインをロードバイクで登ってきました。
コロナウイルス対策で『県を跨ぐ移動の自粛』を求められるので、バイクでの長距離ツーリングがなかなか行き辛い状況でした。
そこで沢山距離走れないのであれば、行ける範囲での密度を上げれば良いのでは?と考え、ロードバイクに手を出してみたのが今年の春の話です。
そんなロードバイクですがマイカー規制となっている道路を走れるというメリットがありました。
丁度岐阜県には乗鞍スカイラインというマイカー規制のある観光道路がありまして、主に観光バスに乗って頂上に上がるのが全国的にも有名な観光地となっています。
ママチャリは当然として、クロスバイクやマウンテンバイクより効率的に走ることが出来るロードバイクを手に入れた今、混雑する観光バスを使わずに乗鞍スカイラインを観光できる!ということでタイミングを見計らって行ってきました。
2021年9月19日(日)
朝は3時頃に起きて支度をしました。
乗鞍スカイラインまでは車で移動します。
前日のうちにロードバイクの積み込みは終えておきました。
久々に日が昇る前に活動開始しました。
もっとバイクで色々出かけていたならば、早朝スタートも沢山していたのでしょうけど、今年は全然それがありません。
日が昇っていないとはいえ、早朝なので油断していましたが、道中の山道でシカの群れに出くわしました(笑)
前方のガードレールにやたらと反射板が光る箇所があるなぁと思っていたらシカの目でした。登坂車線のある山道で登坂側を走っていたので余裕を持って避けられましたが、気付いて反応に至るまでのラグが長かったので運が良かったです。
朝7時頃に『ほおのき平スキー場』に到着し、ロードバイクを降ろして組み立てました。
因みに詳しくは省きますが、私のロードバイクは厳密にはグラベルロードと言って一般的なロードバイクとはちょっと違います。機会があればそのあたりも記事にするかもです。
このほおのき平スキー場からは乗鞍スカイラインを走る観光バスの乗り場があり、ここから数キロ先の道路の分岐でマイカー規制となるスカイラインに向かうことができます。
ので、ロードバイクで乗鞍スカイラインを走ろうと思ったら、ほおのき平スキー場まで車でやって来てスタートするのがメジャーだと思われます。
(後述しますが実はもう少し先までマイカーで行けました)
観光バスの始発の時間前でしたが沢山の人が並んでいました。駐車場の車のナンバーも岐阜県ナンバーのほうが少ないくらいで、全国から本当に沢山の人が訪れるようですね。
労力は必要ですがロードバイクならバス代も、順番待ちも必要ないので悠々と駐車場を後にします。
空を見ると分かるように、しっかりした雨の翌日とあって天気には期待できそうでした。
駐車場を出てすぐはまだ乗鞍スカイラインではありません。ゲートがあるのですがそこまでの途中です。
一般道から乗鞍スカイライン方面の分岐に逸れてゲートに向かいます。既に駐車場からかなり登りました。思ったよりも斜度がきつくて早くも息があがりました。
因みに乗鞍スカイラインのある乗鞍岳は標高3000m級の山で、道路も2000m以上の場所を走ります。スタートの、ほおのき平スキー場はだいたい1200mなので相当登ります。
ので覚悟はしていましたが、想定よりきつかったです。早起きしているし、3時間近く車運転したあとだし、いきなり標高1000m越えているし酸素が薄いに違いないなどと弱音が出てきますが、まだスカイライン始まってすらいないので頑張っていきます。
想定外に満身創痍になりながらも、スカイラインのゲートがある平湯峠まで登りました。本当に疲れたので補給食として持ってきた一本満足バーを早速食べました。
そして何となく察していたのですが、スカイラインのゲート前まではまだ車で登ってこれました。駐車場があってロードバイクを降ろしている人がたくさんいます。
友達が平湯峠までバイクで行ったことがあると言っていたので、多分行けるんだろうなとは思ってたんですが、衛星写真で見ても駐車場があるように見えなくて車を持ってこなかったんですが、残念ながらありました。
ほおのき平スキー場から平湯峠まで登るのがかなりキツかったので(かといってここから楽になる訳でもない)、次回以降は絶対にゲート前スタートにしようと思います。
言い訳がましいですがここからスタートしていればもう少し頑張れた気がします…
ゲート、と言っても伊勢志摩スカイラインや高速道路のような立派なものがある訳ではなく、道路脇に事務所があって、道の真ん中におじさんが立っているだけでした。ただしそこから先はマイカー規制なので一般車は通過できません。
通過する際に『何処から来たか』『乗鞍にくるのは初めてか』『スカイラインを長野に抜けるか戻ってくるのか』を聞かれました。
乗鞍スカイラインと乗鞍岳、バスで来たことがあると答えたのですが、実際登ってみると記憶が全く無く、初めてだった気がしました。
県またぎは自粛ですし、そもそも長野に降りてからもう一度登ってくるなど到底自分には出来ないのでUターンして戻ってくると伝えました。
そうして乗鞍スカイラインの長い長い登りが始まりました。
どこのスカイラインもそうですが初めは景色が開けないので黙々と登っていきます。
ゲートを通過してから30分しか経過していませんでしたが、意外とすぐに良い景色には出会えました。
スタートの標高がそもそも高いからかすぐに雲と同じ高さまで来たようです。
乗鞍スカイラインを登り始めて最初に現れる展望台が『夫婦松展望駐車場』でした。
既に雲海が見えました!後から思えば夫婦松がどれで何だったのかさっぱりですがそんな事は些細なことで、圧倒的な景色にテンションがあがります。
そこから更に少し行くと『乗鞍スカイライン展望台』(グーグルマップ)があり、駐車場はありませんが展望台がありました。
さっきの展望駐車場はトイレもあったので観光バスが停まるかもしれませんが、ここは停まらないでしょうね。自転車ないし徒歩、タクシーも入れるのでそういう人しか見られない景色です。
そんな肩書ですら凄いのに景色はもっと凄いです。独り占めできるのが勿体ないくらいです。
雲海に沈むのが恐らく平湯温泉のあたりですかね。
左の尖った山が笹ヶ岳、右の方の山々が槍ヶ岳焼岳などのようです。
スタートのときに予感したとおり本当に天気が良く、山の稜線もくっきりでした。
さらにさらに登っていきましたが、斜度が多少なりとも緩むかと思いきや全くそんなことはなく、ひたすらに急勾配が続き、早くもロードバイクを降りて進むようになりました。
スタートからおよそ2時間半くらいでした。
体力回復がてら止まって写真を撮ります。正直体力があっても止まっていたと思います。それくらいにすごい景色でした。
まるで雲海が浸食してきているような景色。気付けば先程の展望台から見た名だたる名山すら見下ろしているような高さです。
凄まじい雲海にテンションが上がり、感動しながらもどんどん足を消耗し、歩く率が上がっていました。休みも兼ねて振り返っては写真を撮り、少し漕いで降りて歩いてを繰り返します。
振り返れば雲海が続く景色は感動を通り越して笑えてくるほどでした。
ロードバイクはエネルギーをかなり消費するので補給食が大切なのですが、自分の見積もりが甘く、持ってきた補給食を食べきってしまいました。スタートからおよそ3時間です。実は水もほぼ無くなっていました。
後ろから次々登ってくるロードバイクを見送りながらちまちま進みます。補給が切れたのでとにかく消耗を抑えながら進むしかありませんでした。距離としてはおよそ半分まで来ており(まだ半分あるのに補給切れてるのは致命的な気もする)、キツイのは前半だけと聞いていたのでとりあえずは進んでいました。
振り返ればやはり雲海が見られます。方角的には高山市街地の方な気がします。
森林限界が近づき、景色が開けてくる一方で足は本当に限界が近かったです。本当にロードバイクに跨って漕ぐ力が入りませんでした。ただ体力、スタミナが切れていた訳ではなく、歩行は問題なく意識もハッキリしていましたので更に進みます。
そして傾斜が少しゆるくなり、景色が開け、いよいよラストスパートかと思ってロードバイクを漕ぎ出したところ、両太ももを痙りました…
筋肉が固まって膝が曲げられなくなってとても痛かったです。バイクに寄りかかるしかなくて暫く立ちすくみました。
暫く待っても筋肉の硬直が溶けず、仕方なくお尻から座り込んで休みました。経験のない状況にリタイアを考えました。
補給食も水も尽き、ゴールまでまだ1時間以上かかりそうで、それだけ並べるとリタイア一択でした。
ただ歩けなくは無かったのです。またロードバイクには『ハンガーノック』という身体のエネルギー切れになる症状があるのですが、そういう感じでもなかったです。なので直ぐに引き返す覚悟はしつつも、登山だと思ってひたすら歩くことにしました。幸い帰りは下りなのでロードバイクに乗りさえすれば勝手に進みます。
今にして思えば、いえ、当時もですがそこに至るまでに十分な景色を堪能していました。
バイクで各地をツーリングする中で、ビーナスライン、滋賀草津高原道路、阿蘇、数々の絶景を見ましたがそのどれよりも今回の景色は凄すぎました。ヘルメット越しでも、分厚いプロテクター入りジャケット越しでもない、ペラッペラのサイクルジャージからの五感で間近にある景色。天気も過去1でした。
でもやはり最後まで行かずに進むのは惜しかったのです。幸いにも体力は有り余っていました。ただロードバイクは漕げないだけで…
森林限界を越えた先の乗鞍スカイラインはそれはそれは絶景でした。
なんなら漕ぐのをやめて歩いていたのが正解だったのではないかと思えるほどです。
きっと痛い足を庇いながら漕いでいたのなら、体力が尽きてしまって気力だけで進んでいたのならば気付けなかった景色だと思います。
このゴツゴツした岩肌の山は猫岳と言うそうです。にゃー
登山道もあるようでした。バスは停まらなさそうなので、登りに来るのは大変そうですね。でも登ってみたいと思いました。
土俵ヶ原
山と山の間、茶色い原に、先の見えない青空が続く
振り返ると烏帽子岳
裾の方が色づき始めていました。早くも紅葉が見られるようになるのでしょうか?
四ヶ岳
登れるんでしょうかね?頂上は凄く見晴らしが良さそうですが。
歩くことは出来てましたがそうはいってもちょこちょこ足がつりかけて休みながら行きました。
岩場で足を休めていたら、通りすがりのロードバイク乗りの方に『絵になってるねえ』と声をかけられました。ナイスガイ。
とはいえまさか足が限界きてて休んでるとは思わないだろうなと思いつつ…
スタートから4時間半、とうとう登りが終わり、高台に出ました。
ザ、高原という感じがして素晴らしいです。
おそらく正面に見えるのが魔王岳、恵比寿岳と呼ばれる山でしょうかね。
暫く進むと桔梗ヶ原と呼ばれているらしい場所に着きます。
視界が開けて、とんでもないところに来てしまった感が湧いてきます。
奥に見える尖った山は烏帽子岳。
登りは緩くなっていましたがやはり足が限界になっていたので引き続き歩きました。振り返ると雲海が大分無くなっていました。
時刻は12時を回る頃でした。補給食を切らせて2時間が経とうとしていましたが、意外と元気なままでした。
時間も時間だからか登りも下りも自転車がかなり増えてきていました。このあたりからは登山装備で歩いている人もちらほら見かけました。大きなカメラを構えていたので高山植物や野鳥を観察していたのでしょうね。
スタートから5時間半経った12時半ごろ、ついに『乗鞍畳平』に到着しました。
観光バスで登ってきた人が沢山いました。
自転車も沢山でしたが、そこらじゅうにサイクルラックが設置してあり、余裕で駐輪できました。
ともあれ身体のエネルギーも尽きかけだったので、自販機でポカリと水を、売店でおにぎりを2つ買っていただきます。
バスターミナルからすぐ行けるところに展望台や板張りの散歩コースがあり、装備や体力がなくても素晴らしい高原の景色を楽しめそうでした。
気温は13度になっていましたが長袖インナーにサイクルジャージの2枚重ねで丁度いいくらいの体感でした。なんなら恐ろしいほどの晴天で日差しが強く、焼かれるような感じがありました。実際帰ってからかなり日焼けしていました。
頂上まで来たわけなので色々見て回りたくもありましたが、ここは観光バスでも来られる場所なのでまた直ぐに来る事ができると思って観光はしませんでした。
頂上の景色は観光バスさえ乗れば誰でも見られる景色。今回ロードバイクで来たのは、道中のバスからは見つけられないような景色が目的だったので十分満足していました。とはいえ頂上は頂上で格別な景色ですね。
頂上にある泉と、奥に行けば県境の看板があるようです。ロードバイク乗りは看板を目指して行く人が沢山でした。気にはなりましたが、県またぎをしないために県内のスポットに来ている訳なので自粛しました(律儀)。
帰りは散々苦しめられた斜度が手の平を返して背中を押してくれます。ほぼノンストップで下りました。
漕がなくてもロードバイクが進んでいくので、絶景を楽しみながら下っていきます。正直ぐんぐんスピードが上がっていくのでのんびり見ていられませんでした。そういう意味でも行きのうちに景色と空気を堪能できて本当に良かったと思います。
13時50分頃、ほおのき平スキー場まで戻ってこれました。なんと畳平から一時間とかからず下ってしまいました。下りの途中、もうマイカー規制のゲートを通過したなと感じていましたが、間違っていなかったようです。恐ろしいほどの速さで下っていました。
標高差2000mの工程を終えた達成感に、ひとまず自販機のコーラをあおりました。最高です。相変わらず足は自転車が漕げないほどに痛めてましたが、体力は余裕でした。
その後は温泉によってゆっくり身体をほぐしてから帰宅しました。
ほおのき平スキー場をスタートして畳平まで、そこから下って戻ってくるまでかかった時間は6時間25分でした。うち自転車に乗っていた時間は3時間42分なので半分近く歩いていました。
思ったよりも早く足に限界がきてしまって、ロードバイクで登ったとは今ひとつ言い難かったかもしれません。事前に乗鞍スカイラインに行った自転車乗りのブログや、ネットの紹介記事を見る限りでは初心者でも楽しめると書いてあったので、余裕かと思っていたのですが、それなりに大変でした。
ただそれ以上に素晴らしい景色、道でした。
マイカー規制道路なので、たまに通過する観光バスだけ見送りながら、あとは広い道路をのんびりとマイペースで進んでいくことができます。おまけにどんどん視界が開けて景色が良くなっていくときたら、すぐにでもまた行きたくなってしまうような所でした。
普段バイクでも秘境のようなところに向かったりしますが、自分の足でしか辿り着けない、見ることができない景色に出会える乗鞍スカイラインは本当に素晴らしいところでした。